機能的トレーニングvs従来型トレーニング:U19サッカー選手のオフシーズン体力向上を比較
ノルウェーの若年サッカー選手を対象とした研究により、機能的トレーニング(不安定な環境での多方向運動)と従来型トレーニング(安定した環境でのマシン利用)の両者が、サッカー固有のパフォーマンス向上に同等の効果をもたらすことが明らかになりました。ただし従来型トレーニングは筋肉量の増加に優れており、目的に応じた使い分けが重要です。
研究概要
サッカー選手の体力向上に向けたトレーニング方法は、大きく2つのアプローチに分かれています。一つは「機能的トレーニング」で、不安定な環境での多方向運動やサッカー特有の動作パターンを重視する方法です。もう一つは「従来型トレーニング」で、安定した環境でのマシンやバーベルを用いて最大筋力の発揮に焦点を当てる方法です。多くのサッカークラブがこれら両方のアプローチを採用していますが、どちらがサッカー選手のパフォーマンス向上に より有効なのかは、これまで明確ではありませんでした。本研究は、この疑問に対して科学的な答えを提供することを目的としています。
研究方法
ノルウェーのU19(19歳以下)男性サッカー選手33名を対象に、ランダムに3つのグループに割り当てました。機能的トレーニンググループ(11名)、従来型トレーニンググループ(11名)、そして対照グループ(11名)です。
研究期間は8週間のオフシーズンで、前半4週間は全グループが週2回のサッカー練習を実施し、トレーニンググループはさらに週2回の70分間の体力トレーニングを追加しました。後半4週間も同じペースを継続し、対照グループのみ体力トレーニングを中止しました。
機能的トレーニンググループでは、片脚での運動や複数の方向を組み合わせたフリーウェイト運動(ダンベルやケトルベルなど)を実施しました。一方、従来型トレーニンググループでは、両脚を用いた安定した動きを基本とするマシンベースのトレーニングを行いました。
評価項目は、シュート精度と得点効率を測定する「ラフバラ・サッカー・シューティング・テスト(LSST)」を主要な指標とし、柔軟性、動的バランス、スプリント速度、方向転換能力、垂直跳びの高さを副次的な指標としました。
研究結果
機能的トレーニンググループと従来型トレーニンググループの両者は、対照グループと比較してラフバラ・サッカー・シューティング・テストの成績を大幅に向上させました。機能的トレーニンググループは0.43秒の改善(効果量1.62)、従来型トレーニンググループは0.50秒の改善(効果量1.88)を達成し、両者に統計学的な有意差は認められませんでした。つまり、シューティング性能の向上という観点では、両トレーニング方法がほぼ同等の効果をもたらしたということです。
興味深いことに、従来型トレーニンググループは対照グループと比較して体重(筋肉量)が平均2.20キログラム増加しました。この効果は機能的トレーニンググループでは統計学的に有意ではありませんでした。つまり、従来型トレーニングは筋肉の発達により効果的であることが示唆されました。
実践への示唆
本研究の結果は、サッカー選手のオフシーズン体力向上プログラム設計に重要な示唆を与えています。
第一に、トレーニング総量が重要であることです。どちらのトレーニング方法であれ、週2回、70分間のセッションを8週間継続することで、サッカー選手の技術的パフォーマンスは大幅に向上します。つまり、選手が継続できるトレーニング方法を選択することが成功の鍵となります。
第二に、目的に応じた方法の選択です。シュート精度などのサッカー技術パフォーマンスの向上が目標であれば、機能的トレーニングも従来型トレーニングも同等の効果があります。しかし、筋肉量の増加と最大筋力の向上が必要な場合は、従来型トレーニングが優位性を持ちます。
第三に、個別化の重要性です。全ての選手が同じトレーニング方法で最良の結果を得るわけではありません。個々の選手の背景、好み、現在の体力レベルに応じて、最適なトレーニングプログラムを設計することが推奨されます。
実務的には、スポーツ固有の要求とトレーニング目標を明確にした上で、プログラムを構築することが重要です。サッカー選手のオフシーズン準備では、体力向上とサッカー特有の動作パターン習得の両立を目指す必要があり、本研究は両アプローチが有効であることを実証しています。





























