シーズン中にふくらはぎの筋力は低下するのか?オーストラリアンフットボール選手の縦断研究から見える季節変化
オーストラリアンフットボール選手のふくらはぎ(ヒラメ筋)の筋力を1シーズン通して測定した研究により、適切なトレーニングを行えば選手の筋力は低下せず、むしろ向上・維持できることが明らかになりました。一方で、年齢、過去のふくらはぎ損傷歴、性別といった要因が筋力に大きな影響を与えることも判明しています。
研究の背景と目的
ふくらはぎの筋肉、特にヒラメ筋は、スポーツにおける下肢の動的機能に重要な役割を果たしています。ジャンプ、切り返し、加速・減速といった動作に欠かせない部位であり、同時に損傷しやすい部位でもあります。しかし、シーズン中にこの筋肉の筋力がどのように変化するのか、また何が筋力に影響を与えるのかについては、これまで詳しく調べられていませんでした。本研究は、オーストラリアンフットボール選手を対象に、1シーズンを通じてヒラメ筋の筋力がどのように推移するか、またどのような要因が筋力に影響を与えるかを明らかにすることを目的としています。
研究方法
西オーストラリア州とビクトリア州のリーグに属する3チームの選手41名(男性32名、女性9名)が参加しました。研究期間は1シーズン全体で、測定時点は3つに分けられました。プレシーズン(T0)、シーズン中盤(T1)、シーズン終盤(T2)の各段階です。
測定項目は、膝を曲げた姿勢での最大随意収縮による足底屈(つま先を下に向ける動き)の筋力です。これは、座った状態で下肢を機械に接続し、どの程度の力を発揮できるかを測定するものです。測定された項目には、絶対的な筋力の数値だけでなく、体重あたりの相対的な筋力、左右の脚の筋力差も含まれました。
分析では、シーズンを通じた筋力の変化を調べるだけでなく、年齢、性別、過去のふくらはぎ損傷歴、スポーツ経歴、ふくらはぎ特化型のレジスタンストレーニング実施状況といった要因が筋力に与える影響も統計的に検討されました。
研究結果
合計210回の筋力測定から、以下の結果が得られました。
シーズン中の筋力変化:絶対的な筋力はプレシーズンの平均121.7キログラムから、シーズン中盤に135.2キログラム、シーズン終盤に135.8キログラムへと増加しました。体重あたりの相対的な筋力も同様に、プレシーズンの1.51体重比から、シーズン中盤に1.69体重比、終盤に1.75体重比へと向上しました。これらの変化は統計的に有意でした。
筋力に影響を与える要因:複数の要因が筋力の低下と関連していました。最も顕著だったのは過去のふくらはぎ損傷歴で、以前に損傷を経験した選手は有意に低い筋力を示しました。年齢も影響を与え、より高年齢の選手ほど筋力が低い傾向が見られました。
性別による違い:女性選手は男性選手と比べて、絶対的な筋力および相対的な筋力の両方が有意に低くなっていました。さらに、左右の脚の筋力差(非対称性)も女性選手の方が大きい傾向が認められました。
実践への示唆
本研究の最も重要な知見は、適切なトレーニングと管理のもとでは、選手のヒラメ筋の筋力はシーズン中に低下せず、むしろ向上・維持できるということです。これは、シーズンが進むにつれて筋力が自動的に低下するという懸念を払拭するものです。
トレーニング愛好者にとって、この結果は計画的なレジスタンストレーニングの継続の重要性を示唆しています。ふくらはぎ特化型のトレーニングを継続することで、シーズンを通じて筋力を維持・向上させることが可能です。
また、個人の特性に応じたカスタマイズが重要です。過去にふくらはぎの損傷を経験した選手は、より注意深いモニタリングと予防的なトレーニングが必要です。年配の選手も同様に、意識的な筋力維持が求められます。女性選手に見られた筋力差と非対称性は、性別に応じた適切な負荷設定と、左右差の改善に焦点を当てたトレーニングプログラムの必要性を示唆しています。
スポーツ現場では、これらの知見を基に、選手個人の特性に基づいた予防戦略、パフォーマンス向上、および損傷後のリハビリテーションのベンチマーク設定に活用することができます。定期的な筋力測定と継続的なレジスタンストレーニングは、下肢の健康維持とパフォーマンス向上の両面で重要な役割を果たすと言えるでしょう。





























