有酸素運動と筋トレの組み合わせ方が爆発力に与える影響―同じ筋肉か異なる筋肉かで結果が変わる
有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせると、爆発的な力の発揮が低下する可能性があります。本研究は、この低下が両方のトレーニングで同じ筋肉を使う場合に顕著であり、異なる筋肉を鍛える場合には影響が少ないことを明らかにしました。トレーニング計画の立案に重要な知見です。
研究の概要
有酸素運動と筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)を同時に行う「コンバインドトレーニング」は、心肺機能と筋力の両方を高めたいアスリートや運動愛好者に人気です。しかし、一部の研究では、この組み合わせが爆発的な動きのパフォーマンス低下をもたらす可能性が報告されています。この現象は「干渉効果(インターフェレンス)」と呼ばれます。
本研究の重要なポイントは、有酸素運動と筋トレが「同じ筋肉グループを対象にしている場合」と「異なる筋肉グループを対象にしている場合」で、パフォーマンスへの影響がどう変わるかを調べたことです。この違いを理解することで、より効果的なトレーニング計画の作成が可能になります。
研究の方法
この研究には32人の男性が参加し、12週間のトレーニングプログラムに取り組みました。参加者は3つのグループに分けられました。
- LHLS グループ:下半身の高強度インターバルトレーニング(HIIT)と下半身の筋力トレーニングを同時実施
- LHUS グループ:下半身の高強度インターバルトレーニング(HIIT)と上半身の筋力トレーニングを実施
- LSUS グループ:下半身と上半身の筋力トレーニングのみ(有酸素運動なし)を実施
研究開始前と終了後に、スクワット(下半身)とベンチプレス(上半身)の動作速度を測定しました。具体的には、「平均推進速度(MPV)」という指標と「速度低下」を分析対象としました。平均推進速度は、重りを動かす際の瞬間的な速さを反映し、爆発力の指標となります。速度低下は、複数回の反復を行うときに速度がどれだけ落ちるかを示すもので、筋疲労の度合いを反映します。
研究の結果
ベンチプレスでは、3つのグループ間で統計的に有意な差は見られませんでした。つまり、上半身の爆発力は、下半身に有酸素運動を組み合わせることで悪影響を受けなかったということです。
対照的に、スクワットでは興味深い結果が得られました。LHLS グループ(下半身のHIITと筋トレを組み合わせた群)では、プログラム終了後に平均推進速度が有意に低下していました。具体的には、同じ負荷でも以前ほど速く動かせなくなったということです。一方、LSUS グループ(筋力トレーニングのみ)では、こうした低下は見られませんでした。
ただし、速度低下(疲労の進行度)については、すべてのグループで統計的に有意な変化は観察されませんでした。つまり、疲労の累積パターンに大きな違いはなかったものの、瞬間的な爆発力に差が出たということです。
実践への示唆
トレーニング計画への応用:この研究から、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせる場合、異なる筋肉グループを対象にする方が爆発力の維持に有利であることが示唆されます。例えば、下半身のHIITと上半身の筋トレ(LHUS)という組み合わせは、同じ筋肉に両方のトレーニングを行うより、爆発的なパフォーマンスの低下を抑える傾向にあります。
スポーツ選手への考慮:ボクサーやバスケットボール選手など、爆発力が重要なスポーツに従事する者は、有酸素運動と筋力トレーニングで異なる筋肉グループを対象にすることで、競技パフォーマンスの維持がより容易になる可能性があります。
トレーニング日の分け方:同じ筋肉グループに対して有酸素運動と筋トレを行う必要がある場合は、異なる日に行うか、実施順序やボリュームを調整するなど、より慎重なプログラミングが求められるかもしれません。
個人差への注意:本研究は男性のみを対象としているため、女性や異なる年齢層での結果は異なる可能性があります。また、12週間という期間での研究であるため、より長期的なトレーニングの効果については今後の検証が必要です。





























