男女で異なるベンチプレスの疲労判定基準:速度低下率を使ったトレーニング強度管理の実践的ガイド
ベンチプレスにおいて、バーの速度低下率は男女を問わず疲労レベルの優れた指標となることが確認されました。しかし同じ速度低下率でも、男性は女性よりも多くの反復回数をこなせる傾向があり、特に軽度から中程度の疲労段階で顕著です。これはトレーニングの強度管理を行う際に、性別による調整が必要であることを示唆しています。
研究概要
このPubMedに掲載された研究では、ベンチプレスというウェイトトレーニングにおいて、バーの移動速度がどの程度低下したかが、実際の疲労度合いをどれくらい正確に反映しているかを調べました。さらに、この関係が男女によって異なるかどうか、そして事前の疲労の有無が影響するかどうかに焦点を当てています。
研究方法
研究には男性15名、女性15名の合計30名が参加しました。各参加者は1週間の間隔を空けて、4つのプロトコル(異なる条件下での運動パターン)を実施しました。
各プロトコルの基本構成は以下の通りです:最初に事前運動として60%1RM(1回の最大挙上重量の60%)で3セットを実施し、その後に同じ60% 1RMで限界までベンチプレスを行いました。ここで重要なのは、事前運動中に達成される速度低下率が異なる4つの条件を設定したことです。
- PEVL0:事前運動で速度低下なし(0%)
- PEVL20:事前運動で速度が20%低下
- PEVL40:事前運動で速度が40%低下
- PEVL60:事前運動で速度が60%低下
研究者たちは、速度低下率と実際に完了した反復回数の関係を分析し、その相関の強さと精度を評価しました。
結果と重要な発見
まず注目すべき結果は、速度低下率と完了した反復回数の関係の強さです。男性ではR2値が0.93から0.94、女性では0.90から0.92という高い値を示しました。R2値は相関の強さを示す指標で、1に近いほど関係が強いことを意味します。この結果は、いかなる疲労段階においても、また男女を問わず、速度低下率が疲労レベルを示す信頼できる指標であることを示しています。
しかし、より詳細に見ると重要な性差が明らかになりました。同じ速度低下率に対して、男性は女性よりも多くの反復回数を完了していたのです。この違いは特に低い速度低下率から中程度の速度低下率の範囲で顕著でした。
興味深いことに、事前の運動で高度な疲労が発生していた条件では、この男女差が減少する傾向が見られました。つまり、すでに疲労が蓄積している状態では、男女の間のパフォーマンス差が縮小するということです。
トレーニング実践への示唆
これらの結果は、ベンチプレスを含むレジスタンストレーニングにおいて、速度低下率を使ったトレーニング強度管理の有効性を確認しています。多くのトレーナーやアスリートは、バーの速度が低下する程度を測定することで、そのセットがどの程度の強度で実施されたかを評価しています。この研究はそのアプローチが有効であることを科学的に支持しています。
ただし、実践の際に意識すべき点があります。女性トレーニーが男性と同等の相対的な努力水準を達成したいのであれば、女性はやや高い速度低下率の閾値を設定する必要があるかもしれません。例えば、男性が15%の速度低下で達成する相対的努力度を女性が達成しようとする場合、女性はそれより大きな速度低下を許容する必要があるということです。
この知見は、特にトレーニング処方の精度を重視する場合や、複数の人物に同じプログラムを適用する際に重要です。個々の性別によって最適なトレーニング指標を調整することで、より効果的で公平なトレーニングプログラムが実現できるでしょう。





























