歯ぎしりの自覚症状と顎関節症の関連性―歯学部学生での調査から
歯ぎしり(ブラキシズム)の有無を自覚しているかどうかは、実際の臨床的な歯ぎしりの兆候よりも、むしろ顔や顎の痛みと顎関節症の症状に強く関連していることが明らかになりました。つまり、自覚できる歯ぎしりと、歯科医師が診察で見つける歯ぎしりの兆候は、異なる側面を反映している可能性があります。
研究概要
歯ぎしりは多くの人が経験する口腔習癖ですが、これまで研究によって診断方法がばらばらでした。この研究では、「Bruxism Screener」という統一された臨床検査ツールを用いて、歯学部学生における歯ぎしりの実態を調べました。特に注目したのは、自分で歯ぎしりを自覚している人と自覚していない人の間に、実際の臨床的な兆候や痛みの感じ方にどのような違いがあるかということです。
研究方法
この研究には、臨床的な歯ぎしりの兆候を示す歯学部学生163名が参加しました。参加者は以下の調査と検査を受けました。
- 基本情報(年齢、性別など)に関するアンケート
- 「知覚ストレス尺度」を用いたストレスレベルの測定
- 「Fonseca問診指数」を用いた顎関節症の症状評価
- 視覚アナログスケール(0~10の数字で表す痛みの強さ)による顔や顎の痛み強度の測定
- Bruxism Screenerを用いた臨床検査(歯の擦り減り、咬筋の肥大、頬の内側の白い線、舌のギザギザ圧痕などを調べる)
参加者は「自分は歯ぎしりをしていると思う」と答えた人と「していないと思う」と答えた人の2グループに分けられ、両グループを比較分析しました。
研究結果
臨床検査で観察された歯ぎしりの兆候は以下の通りでした。
- 歯の擦り減り(歯牙磨耗):98%の学生に認められた
- 咬筋(噛む筋肉)の肥大:71%
- 頬の内側の白い線(linea alba):63%
- 舌のギザギザした圧痕(舌圧痕):50%
興味深いことに、自分で歯ぎしりを自覚している人と自覚していない人の間では、これらの臨床的な兆候の数や個別の兆候の出現頻度に有意な差は認められませんでした。つまり、臨床検査で同じくらい歯ぎしりの痕跡がある人でも、自分で気づいている人と気づいていない人がいるということです。
一方、統計分析の結果、自分で歯ぎしりを自覚することに強く関連していた要因は以下の2つでした。
- 顔や顎の痛みの強度が強いほど、自分で歯ぎしりを自覚する可能性が2.8倍高かった
- 顎関節症の症状がある人は、症状がない人と比べて、自分で歯ぎしりを自覚する可能性が5.8倍高かった
ストレスレベルは、統計的に有意な関連性を示しませんでした。
実践への示唆
この研究結果は、トレーニング愛好者にとって重要な意味を持ちます。強いトレーニングを行うときや競技の本番前には、ストレスや集中による無意識の歯ぎしりが増加する傾向があります。
もし以下のような症状を感じたら、単に「歯ぎしりをしている」と判断するだけでなく、顎関節症や顔・顎の痛みが発生している可能性を考慮すべきです。
- 朝起きたとき、顎や顔が痛い、または違和感がある
- 噛むときに顎が痛む
- 頭痛や首の痛みが頻繁に起こる
- 口を大きく開けられない、またはあけるときに音がする
トレーニング中にストレスや緊張を感じたときは、定期的に肩や首、顔の筋肉をリラックスさせることが重要です。また、顎に違和感を感じたら、自分で「歯ぎしりをしているから大丈夫」と判断するのではなく、歯科医師の診察を受けることをお勧めします。実際の臨床兆候よりも、痛みや顎関節症の症状の方が、より深刻な問題を示唆しているかもしれません。





























