RPE(自覚的運動強度)を基準にしたデッドリフトトレーニングは、固定負荷法と同等の筋力向上をもたらし、疲労感が少ない
自分の感覚で負荷を決める「RPE法」と、最大筋力の一定割合に基づく「固定負荷法」でトレーニングを行った場合、どちらが優れているのか検証した研究です。驚くべき結果として、RPE法は固定負荷法と同程度の筋力向上をもたらしながら、体感疲労を軽減できることが明らかになりました。
研究の背景と目的
トレーニングの負荷設定は、筋力向上を目指す際に非常に重要です。従来、トレーニングの負荷は最大筋力の何パーセントかで決める「固定負荷法」が標準的でした。一方、自分がどの程度きついと感じるかを数値化する「RPE法」(Rating of Perceived Exertion)という方法があります。本研究は、この二つの方法でデッドリフトトレーニングを行った場合、筋力向上や疲労、身体組成にどのような違いが生じるかを比較することを目的としています。研究者たちは、自分の感覚に基づいたRPE法の方がより優れた成果をもたらすと予想していました。
研究の方法
この研究には、平均年齢24歳前後の若い被験者24名が参加しました。被験者は二つのグループにランダムに分けられ、一つのグループはRPE法(12名)、もう一つのグループは固定負荷法(12名)でトレーニングを行いました。
両グループは同じセット数とレップ数を実施しましたが、負荷の決め方が異なります。RPE法では、トレーニング者自身が「あと何回できそうか」という感覚で負荷を調整し、固定負荷法では最大筋力の80パーセント程度という事前に決められた重さを使用しました。
トレーニング前後に、デッドリフトの最大筋力、握力、身体組成(二重エネルギーX線吸収測定法)を測定しました。さらに、トレーニングセッション前の疲労度を100ミリメートルのスケールで記録しました。
研究の結果
最初に注目すべき点は、デッドリフトのトレーニング量です。セッションごとの負荷量(キログラム)はRPE法と固定負荷法でほぼ同等でしたが、全体のトレーニング総量では固定負荷法の方が約2倍以上多くなりました。これは、固定負荷法が追加の補助トレーニングを含んでいたためです。
デッドリフトの最大筋力は、両グループともに向上しました。RPE法では約12.3キログラムの向上、固定負荷法では約10.8キログラムの向上が見られ、統計的に有意な改善が確認されました。つまり、トレーニング総量が少なかったRPE法でも、固定負荷法と同程度の筋力向上が実現したのです。
握力は、RPE法のグループでのみ有意な向上(約3.6キログラム)が見られました。この点は興味深い発見で、RPE法が全身の筋力向上に優れている可能性を示唆しています。
最も重要な発見の一つが、トレーニングセッション前の疲労度です。RPE法のグループは平均27.8ポイントであったのに対し、固定負荷法のグループは32.7ポイントと、有意に高い疲労感を報告していました。つまり、RPE法は少ない疲労で効果的なトレーニングが実現できることを示唆しています。
身体組成(筋肉量と脂肪量)については、両グループともに大きな変化は見られませんでした。
実践への示唆
この研究結果は、トレーニング愛好者にとって複数の実用的な意味を持ちます。
第一に、最大筋力の正確な測定が困難な場合や、その日の体調に応じて負荷を調整したい場合、RPE法は非常に有効な選択肢となります。「あと2から3回できそう」という感覚で負荷を設定することで、固定負荷法と同等の筋力向上が期待できるのです。
第二に、RPE法は疲労感が少ないという特性により、トレーニングの継続性が向上する可能性があります。同じ筋力向上が期待できるなら、より少ない疲労でトレーニングできる方が、心理的にも身体的にも負担が小さくなります。
第三に、握力の向上がRPE法で顕著だった点は、より効率的な運動技術の習得を示唆しているかもしれません。自分の感覚で負荷を調整することで、より良いフォームでトレーニングが実施され、その結果として握力などの関連する筋力も向上した可能性があります。
ただし、本研究にはいくつかの限界があります。参加者の数が限定的であり、若い成人男性を対象としているため、他の年齢層や経験レベルへの一般化には注意が必要です。また、研究期間の長さによって結果が変わる可能性もあります。
結論として、RPE法は単なる補助的な方法ではなく、固定負荷法と同等の効果を持つ実用的なトレーニング設計方法として推奨できます。特に、より少ない心理的負担でトレーニングを継続したいトレーニング愛好者にとって、RPE法の導入は有益な選択肢となるでしょう。





























