速度ベーストレーニングは筋トレ中の疲労を考慮
筋トレ中に疲労が蓄積すると、セッション開始時に測定した最大重量(1RM)は実際の力発揮能力を正確に反映しなくなる可能性があります。この研究は、トレーニング前に測定した1RMに基づいて負荷を決めるのではなく、バーの速度を測定して強度を判断する「速度ベース法」の方が、疲労下での実際の力発揮をより正確に予測できることを明らかにしました。
速度ベーストレーニング研究概要
この研究は、筋トレ愛好者にとって非常に実用的なテーマに取り組んでいます。通常、トレーニングプログラムは事前に測定した1RM(1回挙上できる最大重量)の比率に基づいて設定されます。例えば「70%1RMで5セット」といった処方です。しかし、トレーニングが進むにつれて疲労が蓄積すると、開始時に測定した1RMはもう有効ではなくなるのではないか——この疑問に対して、研究者たちは速度ベース測定法が優れているのかを検証することに決めました。
速度ベーストレーニング研究方法
実験には筋トレ経験者の男性27名が参加し、以下の3つの条件下でテストが行われました:
- コントロール:休息のみ
- 中程度疲労:70%1RMで5セット、各セットで最大反復回数の半分を実施
- 高度疲労:70%1RMで5セットを限界まで実施
各セッションの前後で、ヘックスバー・デッドリフト(六角形のバーを使用したデッドリフト)の1RMを直接測定しました。その後、トレーニング後の実際の1RMを、以下の6つの推定方法と比較しました:
- トレーニング前の1RM
- トレーニング後の速度-負荷プロファイル
- トレーニング後に50%、70%、80%、90%1RMで記録したバーの速度を使用した4つの速度ベース法
速度ベーストレーニング研究結果
驚くべき結果が明らかになりました。トレーニング前の1RMに基づいた推定は、実際の力発揮を平均9.5kg過大評価しており、疲労が増加するとこの誤差はさらに大きくなりました。一方、速度ベース法の誤差は疲労の増加に伴って安定していました。
精度ランキングは以下の通りでした(低い順):
- 最も精度が低い:速度50%(平均誤差15.4kg)
- トレーニング前1RM(平均誤差9.5kg)
- 速度70%と80%がほぼ同等(各6.5kg前後)
- 速度-負荷プロファイル(平均誤差5.9kg)
- 最も精度が高い:速度90%(平均誤差4.7kg)
特に注目すべきは、トレーニング前の1RMに基づく誤差が疲労とともに増加したのに対し、速度ベース法の誤差は疲労条件を通じてより一貫していたという点です。
速度ベーストレーニング実践への示唆
この研究結果は、トレーニング愛好者にいくつかの重要な示唆をもたらします。
1. トレーニング処方の見直し:セッション開始時に測定した1RMに依存すると、特に複数セット実施後は実際の力発揮よりも過度に高い負荷を設定してしまう可能性があります。これは怪我のリスク増加や、不適切なトレーニング刺激につながる可能性があります。
2. 速度ベース法の導入:バーの移動速度を測定して強度を調整する方法は、疲労の影響を受けにくく、より正確なトレーニング処方が可能になります。スマートフォンアプリや専用デバイスを使用することで、この方法を比較的簡単に導入できます。
3. 測定位置の選択:研究では90%1RMでの速度測定が最も正確でしたが、実際のトレーニングでは70%~90%1RMでの速度測定が現実的で実用的です。
4. 疲労度の考慮:セッション進行に伴い、固定的な1RM比率ではなく、実測の速度に基づいた調整が重要になります。特に多セット実施プログラムでは顕著な差が生じます。
今後、筋トレのパフォーマンス管理は「強度を感じ」からより科学的で個別対応的な「速度で判断」する方向へシフトしていく可能性があります。





























