ウェアラブルデバイスの個別キャリブレーションで高強度運動の消費エネルギー測定精度が向上—レジスタンス運動では限定的
ウェアラブルデバイスを使った運動中の消費エネルギー推定精度を調べた研究で、個人の身体情報に基づいてデバイスを調整すると、インターバルトレーニングなどの高強度運動では測定精度が向上することが明らかになりました。一方、筋トレなどのレジスタンス運動では精度向上の効果が限定的であり、異なるアプローチが必要な可能性が示唆されています。
研究の概要
この研究は、市販されているウェアラブルデバイスが運動中のエネルギー消費をどの程度正確に測定できるかを検証したものです。特に、個人の身体情報に基づいてデバイスを調整する「個別キャリブレーション」が測定精度に与える影響に焦点を当てています。対象者は、筋トレの経験がある31名の女性アスリートです。
一般的なウェアラブルデバイスは、加速度計やハートレートセンサーなどの複数のセンサーを搭載し、日常生活や運動時のエネルギー消費を推定しています。しかし、個人差が大きいため、実際の消費エネルギーとの乖離が生じることが知られていました。本研究は、個人ごとの体格や基礎代謝を測定し、その情報をもとにデバイスを調整することで、推定精度がどこまで向上するのかを明らかにしようとしました。
研究の方法
研究は2つのテストセッションに分けて実施されました。
第1セッションでは、基礎代謝率(安静時に消費するエネルギー)、体の大きさや体脂肪などの身体組成、そしてトレッドミル上での段階的な運動試験が行われました。これらのデータは、デバイスの個別キャリブレーションに使用されます。
第2セッションでは、2種類の運動が実施されました。ひとつは「Bath University Rugby Union Shuttle Test」という間欠的な高強度運動で、ラグビーの動作をシミュレートしたものです。もうひとつはレジスタンス運動(筋トレ)セッションです。
測定には、2種類のデバイスが使用されました。ひとつは「Actiheart 5」というハートレートセンサーと加速度計を組み合わせたデバイス、もうひとつは「GENEActiv」という加速度計です。これらのデバイスから得られた消費エネルギー推定値と、実際の消費エネルギー(間接熱量測定法で測定)を比較しました。レジスタンス運動では、血液中の乳酸濃度から無酸素性運動による追加的なエネルギー消費も計算に含められました。
精度の評価には、推定値が実際の値から±10パーセント以内に収まるかどうかという基準が使用されました。
研究の結果
高強度運動(Bath University Rugby Union Shuttle Test)では、個別キャリブレーションされたActiheart 5が良好な結果を示しました。グループ全体のレベルでは、推定値が実際の消費エネルギーと同等(平均誤差は4.5キロカロリー程度)であり、±10パーセント以内の基準を達成しました。一方、個別キャリブレーションされたGENEActivは、平均誤差が69.5キロカロリーと大きく、精度が劣りました。
ただし、個人ごとの誤差は依然として大きく、測定値のばらつきは113.9から122.8キロカロリーの範囲に及びました。つまり、グループ平均としては正確でも、個人個人の予測精度には改善の余地があるということです。
一方、レジスタンス運動では、Actiheart 5もGENEActivも満足のいく精度を示しませんでした。個別キャリブレーションの効果も限定的でした。このため、筋トレのエネルギー消費推定には、異なる方法が必要である可能性が指摘されました。
実践への示唆
高強度運動のトレーニング管理:インターバルトレーニングなどの高強度運動でエネルギー消費を把握したい場合、ハートレートセンサーと加速度計を組み合わせたウェアラブルデバイスが役立つ可能性があります。ただし、デバイスの個別キャリブレーションが精度向上に必須です。すなわち、使用前に自分の基礎代謝や体組成などの情報をデバイスに入力することが重要になります。
レジスタンス運動とのギャップ:筋トレのようなレジスタンス運動では、ウェアラブルデバイスによるエネルギー消費推定の精度が低いことが判明しました。これは、レジスタンス運動では無酸素性エネルギー供給システムが大きな役割を果たすため、表面的な身体活動の指標だけでは正確な推定が困難なことが理由と考えられます。
実務的なアプローチ:研究では、レジスタンス運動のエネルギー消費推定には「メッツ(Metabolic Equivalents of Task)」という別の方法が、より実用的かもしれないと提案されています。メッツは、運動の種類と強度に基づいて標準化されたエネルギー消費量を示すもので、ウェアラブルデバイスよりも簡便に利用できます。
今後の活用方法:トレーニング愛好者は、高強度な有酸素運動とレジスタンス運動では、異なるツールやアプローチを組み合わせることで、より正確なエネルギー管理が可能になるでしょう。ウェアラブルデバイスは有酸素運動では有用ですが、筋トレではメッツなどの補助的な指標と併用することが推奨されます。





























