加圧トレーニングvs.高強度筋トレ、バイオマーカーへの影響
加圧トレーニング(血流制限トレーニング)と通常の高強度レジスタンストレーニングでは、筋肉から分泌されるホルモン様物質「マイオカイン」の反応に違いがあることが明らかになりました。特に「イリシン」の増加は高強度トレーニングのほうが大きく、機械的な負荷の重要性が示された一方、低酸素・代謝ストレスに関わるHIF-1αはどちらの方法でも同様に上昇しました。高強度トレーニングが難しい場合でも、加圧トレーニングが有効な代替手段になり得ることを示唆する研究です。
加圧トレーニングvs.高強度筋トレ研究概要
この研究は、欧州応用生理学誌(European Journal of Applied Physiology)に掲載されたもので、過体重の若年成人を対象に、血流制限を用いた低強度レジスタンストレーニング(LTBFR)と通常の高強度レジスタンストレーニング(HT)の効果を比較しました。注目したのは、筋肉が分泌する生理活性物質(マイオカイン)である「イリシン」「ミオスタチン」、そして低酸素応答に関わる「HIF-1α」という3つの血中バイオマーカーです。
これらの物質は筋肉の成長・代謝・エネルギー消費に深く関わっており、トレーニングの種類によってどう変化するかを調べることで、「機械的な負荷(重さ)」と「低酸素・代謝ストレス」のどちらが筋肉適応により強く影響するかを明らかにしようとしました。
加圧トレーニングvs.高強度筋トレ研究方法
過体重の若年成人28名を2グループにランダムに分け、8週間・週3回のトレーニングを実施しました。
- LTBFRグループ(加圧トレーニング群):1回最大反復重量(1RM)の40%という低負荷で、動脈閉塞圧の60%の圧力で血流を制限しながら実施
- HTグループ(高強度トレーニング群):1RMの70%という高負荷で通常のレジスタンストレーニングを実施
トレーニング前後に、体組成(腕・太もものサイズなど)と血清中のイリシン・ミオスタチン・HIF-1α濃度を測定し、各グループ12名ずつのデータを分析しました。
加圧トレーニングvs.高強度筋トレ研究結果
8週間のトレーニング後、以下のような結果が得られました。
- 腕周囲径:両グループともに有意に増加。加圧トレーニングでも低負荷ながら腕の筋肥大効果が認められた。
- 太もも周囲径:高強度トレーニング群のみで有意な増加。より大きな筋群への肥大効果には、ある程度の機械的負荷が必要であることが示唆された。
- イリシン(代謝促進・脂肪燃焼に関わるマイオカイン):両グループで有意に増加したが、高強度トレーニング群のほうが増加幅が有意に大きかった。これは、イリシンの分泌には機械的な負荷の大きさが重要な役割を果たすことを示している。
- ミオスタチン(筋肉の成長を抑制するホルモン):両グループともに有意な変化は見られなかった。8週間という期間や対象者の特性が影響している可能性がある。
- HIF-1α(低酸素・代謝ストレスに応答するタンパク質):両グループで有意に増加し、グループ間の差は認められなかった。低酸素環境をつくる加圧トレーニングでも、高強度トレーニングでも、同程度に代謝・低酸素シグナルが活性化されることがわかった。
トレーニングへの実践的示唆
この研究はトレーニング愛好者にとって、いくつかの重要なメッセージを含んでいます。
- イリシンを増やしたいなら高強度トレーニングが有利:イリシンは脂肪燃焼や代謝向上に関わるマイオカインです。その分泌を最大化するには、ある程度の高い機械的負荷(重量)が重要と考えられます。
- 加圧トレーニングは「使える代替手段」:怪我のリハビリ中、高齢者、関節への負荷を避けたい場面など、高強度トレーニングが難しい状況でも、加圧トレーニングは腕の筋肥大やHIF-1αの活性化において同等の効果を示しました。完全な代替ではないものの、有効な選択肢です。
- 低酸素・代謝ストレスはどちらの方法でも引き出せる:HIF-1αの上昇は、血流制限による物理的な低酸素だけでなく、高強度トレーニングによる代謝的ストレスでも同様に起こることが確認されました。筋肉の適応を促す代謝シグナルは、方法を問わず活性化できます。
- 大筋群の肥大には負荷の大きさが鍵:太ももなど大きな筋肉群の周囲径増加は高強度群のみで見られました。大きな筋群をしっかり発達させたい場合は、十分な強度での通常のレジスタンストレーニングが依然として重要です。
今後は、より長期間の介入や多様な対象者を含む研究によって、これらの知見がさらに深まることが期待されます。自分の目標や身体状況に合わせて、トレーニング方法を賢く選択する一助となる研究です。





























