フルスクワットの速度で負荷がわかる速度ベーストレーニング
バーベルを持ち上げる速度を測るだけで、今日の最大挙上重量(1RM)に対する負荷の割合がわかる——そんな「速度ベーストレーニング(VBT:Velocity Based Training)」の有効性が、女子サッカー選手を対象とした新たな研究で改めて示されました。さらに注目すべき点は、U-16・U-18・シニアという異なる年齢カテゴリー間で、速度と負荷の関係にほとんど差がなかったことです。つまり、年齢に関係なく共通の速度基準表を使ってトレーニング強度を管理できる可能性が示されました。
速度ベーストレーニング研究概要
本研究はスペインのサッカークラブに所属する女子選手85名を対象に実施されました。選手はシニア、U-18、U-16の3つの年齢カテゴリーに分かれており、全員が少なくとも6か月以上のレジスタンストレーニング経験を持ち、週2回のフルスクワット(FS)トレーニングを継続していました。
研究の目的は2つ。①フルスクワットにおける「負荷と挙上速度の関係」を明らかにすること、②その関係が年齢によって変化するかどうかを検証することです。
速度ベーストレーニング研究方法
参加者は1RMを決定するための漸増負荷テストを実施しました。各セットでバーベルを持ち上げる際、リニア速度トランスデューサー(ひもを引っ張る形式の速度計測器)を使い、コンセントリック局面(持ち上げ動作)における以下の3つの速度指標を計測しました。
- MPV(平均推進速度):加速局面のみの平均速度(重力に逆らって推進している区間)
- MV(平均速度):コンセントリック全体の平均速度
- PV(ピーク速度):動作中の最大瞬間速度
これらの速度指標と、1RMに対する相対負荷(%1RM)との関係を統計的に解析しました。また、年齢カテゴリー間の差異を検証するために混合効果多項式モデルが用いられました。
速度ベーストレーニング研究結果
まず、相対負荷(%1RM)と各速度指標の間に非常に強い関係が確認されました。
- MPVとの関係:R²=0.961(説明率96.1%)、標準推定誤差0.069 m/s
- MVとの関係:R²=0.958(説明率95.8%)、標準推定誤差0.062 m/s
- PVとの関係:R²=0.795(説明率79.5%)、標準推定誤差0.132 m/s
MPVとMVは非常に高い精度で%1RMを推定できるのに対し、PVは相対的に精度が低いことがわかりました。また、3つの年齢カテゴリー間でいずれの速度指標においても統計的に有意な差は認められず、年齢が負荷・速度関係に一貫した影響を与えないことが示されました。
速度ベーストレーニングの実践的示唆
この研究結果は、日常のトレーニング現場にいくつかの重要な示唆を与えます。
速度で負荷を管理する「速度ベーストレーニング」が使える
1RMを毎回測定しなくても、その日のバーベルの速度を見るだけで「今日は1RMの何%の負荷を扱っているか」をリアルタイムで把握できます。コンディションが悪い日は同じ重量でも速度が落ちるため、速度を基準にすることで体の状態に合わせた柔軟な強度管理が可能になります。
MPVまたはMVを優先指標として使う
PVよりもMPVやMVのほうが精度が高く、負荷管理の指標として適しています。速度計測器を使う際は、ピーク速度だけでなく平均速度(特に推進局面の平均速度)に注目しましょう。
年齢を超えて共通基準が使える
U-16からシニアまで、年齢カテゴリーが違っても同じ速度基準表を適用できる可能性があります。チーム全体で統一した強度管理の枠組みを導入しやすいという意味で、コーチや指導者にとっても実用的な知見です。
一般トレーニーへの応用
本研究の速度ベーストレーニングは女子サッカー選手を対象としていますが、スクワットの速度と負荷の高い相関関係という知見は、一般のウエイトトレーニング愛好者にも参考になります。スマートフォン用のVBTアプリや簡易速度計測デバイスが普及しつつある現在、速度を使った負荷管理は決して特別なことではなくなりつつあります。重量だけでなく「動きの速さ」にも目を向けることで、より精度の高いトレーニングが実現できるでしょう。





























