オートレギュレーションと従来型トレーニングを比較した最新研究
筋力トレーニングでは「1RMの何%」という固定した重量設定が一般的ですが、体調の波を無視したこの方法では、トレーニング強度が高すぎたり低すぎたりする問題があります。本研究では、その日の調子に応じて負荷を自動調整する「オートレギュレーション」と、従来の固定パーセンテージ法を比較した結果、下半身の筋力向上においてはどちらも同等の効果があることが示されました。ただし、ベンチプレスでは従来法がやや優れており、種目によって適した方法が異なる可能性も示唆されています。
オートレギュレーショントレーニング研究の概要
この研究は、ニュージーランドのマッセー大学などの研究グループが実施し、「Journal of Strength and Conditioning Research」に掲載されたランダム化クロスオーバー試験です。クロスオーバーデザインとは、同じ被験者が2つの異なるプログラムをどちらも経験するという手法で、個人差の影響を排除しやすい信頼性の高い研究設計です。
対象となったのは、トレーニング経験を持つ男性8名(平均年齢24歳、平均体重84.3kg)。彼らは8週間のトレーニングブロックを2回、2週間の休止期間(ウォッシュアウト)を挟んで実施しました。評価種目はスクワット、ベンチプレス、デッドリフトの3種目で、介入前後に1RM(1回しか持ち上げられない最大重量)を測定しました。
オートレギュレーショントレーニングと従来型トレーニング
従来型パーセンテージ法(TP)
ベースラインの1RMを基準に、毎回のセッションで「1RMの〇〇%」という形で重量があらかじめ決まっている方法です。多くのトレーニングプログラムで採用されている一般的なアプローチです。
オートレギュレーション(AR)
毎回のセッション冒頭に、ベースライン1RMの85%でオールアウト(限界まで)のセットを1セット行い、そこで発揮できたレップ数をもとにその日の残りのトレーニング強度を決定する方法です。調子が良い日はより重い重量で、調子が悪い日は軽めの重量で行うことができます。
オートレギュレーショントレーニング研究の結果
8週間後、両グループともスクワット、デッドリフト、3種目合計の1RMが有意に向上しました。特にスクワットの効果量(η²p=0.949)は非常に大きく、両プログラムの間に有意な差はありませんでした。
- スクワット・デッドリフト・合計1RM:両プログラムで同等の有意な向上が確認された
- ベンチプレス:全体的な向上は統計的に有意とはならなかったが(p=0.064)、プログラム間の差は有意(p=0.020)で、従来型(TP)がオートレギュレーション(AR)よりも優れていた(効果量d=1.11と大きな差)
- トレーニング強度:ARはスクワットとデッドリフトでTPより高い%1RMを達成したが、ベンチプレスでは差がなかった
つまりARでは、下半身種目においてはセッションごとに高い強度を自然に引き出せる一方、ベンチプレスではその恩恵が見られませんでした。
オートレギュレーショントレーニングへの実践的示唆
この研究から、一般のトレーニング愛好者にとっていくつかの実践的なポイントが読み取れます。
- 下半身種目にはARが相性良し:スクワットやデッドリフトは、その日の調子に合わせて強度を変えるオートレギュレーション方式でも、従来の固定重量法と同等の筋力向上が期待できます。体調が安定しない時期や、日々の疲労度に波がある人には特に取り入れやすいアプローチです。
- ベンチプレスには従来法が有効な可能性:上半身種目、特にベンチプレスでは、固定したパーセンテージによる計画的な負荷設定の方がやや効果的という結果が出ました。上半身と下半身で最適なアプローチが異なる可能性があり、種目ごとに戦略を分けることも一つの選択肢です。
- どちらも「やれば強くなる」:最も重要なメッセージは、2つの方法のどちらを選んでも、継続的に取り組めば筋力は向上するという点です。完璧なプログラム選びよりも、自分が続けやすい方法を選ぶことが長期的には最も重要かもしれません。
なお、本研究は被験者が8名と少なく、トレーニング経験のある男性のみを対象としているため、女性や初心者への一般化には注意が必要です。今後より大規模な研究での検証が期待されます。





























